
リラックスした状態で座ってみて下さい。次に両腕を肘を伸ばしたままゆっくり頭の上まで挙げていきます。ひっかかったりする感覚や痛みを感じたりしませんか?四十肩・五十肩と呼ばれるも状態では方の動きが制限されます。こんなに有名なのに発生のメカニズムはまだ分かっていません。脊椎のサブラクセーションが肩の問題に繋がる一つの理由は別の記事で説明していますのでこちらを参照して下さい。
今日のトピックは四十肩・五十肩に潜んでいる深刻な病気の可能性についてです。
40代・50代というのは人間の身体に多くの変化が訪れる時期です。心臓は生まれたときから1秒も休まず働き続け、血管には毎日ものすごい量の血が流れ、身体の各部の関節は油をささなくても動きます。しかし、その人の生活習慣やストレスなどの外的・内的要因で身体の機能は大きく左右されます。身体を大切に使いメンテナンスを怠らない人とそうでない人の差が大きく出てくるのもこの年代です。
この四十肩・五十肩はあまりに有名で多くの人が持っているために、「ああ、おれも年だな・・・」と軽視されがちです。しかし、進行すると服を着るのが困難になったり、背中に手が届かなくなったり、肩より高いところの物がとれなくなったりと日常生活に大きな影響を与えます。 さらには非常に小さい確率ですが、肩周辺に出来る悪性腫瘍が四十肩と五十肩と酷似した症状を引き起こすことがあります。(*1)
Shoulder girdle neoplasms mimicking frozen shoulder syndromeという研究では67名の四十肩・五十肩の症状を持った人のうち7人に悪性腫瘍が発見されました。この7名のレントゲン上では何も異常が発見されませんでした。この研究ではMRIを使って最終的な診断が行われました。実際の現場では90%の肩の問題はレントゲンや整形外科検査によって診断が行われますが、おおよそ10%の悪性腫瘍はしこりも感じることはなく、またレントゲンにも一切写りません。(*2) それに加えて、肩以外の場所にある悪性腫瘍も肩へ影響を及ぼす場合があります。肺の悪性腫瘍はしばしば肩の激痛の原因になります。
その他の研究では、34人の悪性腫瘍を持つ患者さんの中の9人が一番最初に四十肩・五十肩であると誤診されたというものもあります。(*1) 9人の患者さんが結果的に悪性腫瘍だと分かるのに平均9ヶ月を要したそうです。これは四十肩・五十肩だと思ってケアを行っても長期にわたって結果が出なかったことが原因で気づくケースが多いことを示しています。9ヶ月といえば腫瘍が次のステージに移行するには十分な期間です。この誤診は患者さんの命を左右しかねません。
四十肩・五十肩はレントゲンには写らない上に、その典型的な症状は”肩の痛み”と”可動性の減少” です。通常3つの段階に分けて考えられます。第一段階はFreezing Phase (急性期):ひどい痛みを伴います。第二段階は Frozen phase (慢性期):全体的な動きが制限されます。そして最終段階:Thawing phase(回復期)は少しずつ可動性が回復し始める時期です。この時期によって最も有効な対処法は違います。冷やしたり暖めたりする時期やタイミング、効果的なエクササイズの方法などはお近くのカイロプラクターに相談してみて下さい。
悪性腫瘍は内臓の腫瘍の他に骨の腫瘍の可能性も考えられます。この時非常に役に立つのが骨の打診です。もし鎖骨、肩峰、烏口突起、上腕骨頭、肩甲棘、に打診を加えたときに変な痛みが起こる場合はBone Scan等を勧めた方がいいかも知れません。(*3)
四十肩・五十肩のケアを続けているけど何ヶ月も改善がみられない場合はちょっと発想を変えてみて下さい。潜んでいる陰が見つかるかも知れません。
参考文献
※今日のポストはDynamic Chiropractic誌に掲載された記事の抜粋を参考に書いています。
1. Sano H, Hatori M, Mitsuyoshi M, et al. Tumors masked as frozen shoulder: a retrospective analysis. J Shoulder Elbow Surg, 2010;19:262-266.
2. Robinson D, Halperin N, Agar G, et al. Shoulder girdle neoplasms mimicking frozen shoulder syndrome. J Shoulder Elbow Surg, 2003;12(5):451-455.
3. Neviaser TJ. Adhesive capsulitis. Orthop Clin North Am, 1987;18:439-43